「辺境・近境」を読んだ

これも紀行もの。中でもメキシコとノモンハンの編が興味深い。あと辺境というのはどこへ行っても虫が凄いってこと。日本だって無人島では虫が凄いらしい。人間はまず虫から退治してそこに住むようになるのか。メキシコの惨状、治安の悪さ。その中で垣間見せる懐かしい風景。ノモンハンは彼は教科書で出会ってからずっと捕われたテーマだったようだ。私はその語感に奇妙な印象は持ったがそれきり気にする事はなかった。彼は現地で銃弾と砲弾の破片を持ち帰りホテルで恐怖の体験をする。ずっと恐れの対象のようにして来たものが具現化してその物体がその恐怖を放射したように。
その恐怖はいつも彼の小説の根底に流れている。いつもは隠れているのにある時ぬっと顔を出す。きっとそれが彼の小説の源泉なのかも知れないと思った。

辺境・近境 (新潮文庫)

辺境・近境 (新潮文庫)

レビューにもあったけどこういう文章があったな。
「どんなに遠くまで行っても、いや遠くに行けば行くほど、僕らがそこで発見するものはただの僕ら自身でしかないんじゃないか」