発狂する人間

 発狂する宇宙という本もあったと思うが読んでないので定かでない。で、発狂すると何が良いのかというとあいつは狂ってしまったからもう何を言っても無駄だ、という事になる。そういう人が時々出るので狂言ではないかとも疑われるわけである。とにかく人間長く生きているといろいろなものに追いかけ回される事になる。もう逃げ切れないとなれば狂ってしまえば楽になると思うわけである。しかし偽装とわかればもっとひどい目に遭わされるので狂うと決めたら徹底的に狂い続けなければならない。自分がいくら正気であると思っても人前では決して正気の姿を見せてはならないのである。他人を騙すにはまず身内から。そして最大の身内は自分にしか他ならない。自分の意識からまず自分は狂っていると思わせねばならないのだ。正気の自分はわずかに無意識の中に場所を見いだすしかない。こんな生活を続けるのも大変な事である。
 しかしこんな切羽詰まった状態に追い込まれなくても発狂してしまいたいという事はありそうである。毎日の同じ繰り返しに飽き飽きしたら。こんな社会はおかしくてやっていられねえ。むしゃくしゃした。こんな日常に耐えられない。パァーッとやりたい。気分転換に狂いたい、というのもよくある事です。時々狂わなければ正気を保てないというわけです。何かを変えたいと思った時は狂ってみるのも一興です。