○○問題

彼は怒っていた。けれど彼の怒りを理解してくれる人は誰もいなかった。この地球上で誰一人として。何を怒っているのかとみんなが聞き、彼は説明を試みるがその論理は複雑で誰も理解できなかった。さっぱり分からん、何を怒っているのだ。そもそも怒るような事なのか。単なる我侭。ある人は何もないものに怒っているという。ある人は誤解していると言い説得を試みるが話はかみ合わなかった。彼は人類が今まで気付かなかった事に一人気付いてしまって怒っているのだろうか。しかしそれを認める人は誰もいなかった。彼の怒りは無視されそのような構造は存在しないと忘却された。
 彼はその怒りをたった一人で証明しなければならなくなった。その怒りの認識をみんなの前に提示せねばならない。こういう事が起こっている。この酷い状況がどうして怒らないでいられるのか。彼の怒りを消滅させるにはその怒りを発生させている構造を解消させるか彼が消滅するかのいずれかしかなかった。彼は自分が消えていなくなるなんて考えられなかったので当然のようにその構造の解体を目指した。それは余りにも無謀な闘いだ。世界にたった一人で挑んでいくなんて。ただのバカだ。当然のように彼は死ぬ。ただの馬鹿が一人死んだだけだ。世界は何事もなかったように平然と存在する。しかし彼がとった行動は何時までも記憶させられる事になり○○問題として永遠に封印される事になった。