本について

もし、ぼくらの読む本が、頭の中に何も残してくれないなら、いったい何のためにぼくらは本を読むのか? きみが言うように、ぼくらの役に立つためか? やれやれ、本なんかなくたってぼくらは同じように生きていけるだろうし、ぼくらの役に立つような本なら、必要とあれば自分で書けるだろう。いいかい、必要な本とは、ぼくらの何の役にも立たない昔の道具のように、未来から来た使用目的不明の機械のように、意味不明の森羅万象の奥深い森の中で迷子になるように、謎のように、ぼくらに何の作用を及ぼすか分からない本のことだ。本とは、ぼくらの内に残る氷解しない氷のようでなければならない。