がんはどうして増えたのか

という答えの一つに人間が長生きするようになったから、というのがある。様々な原因よりも長生きになった事が最大の要因と。細胞が正常に分裂することができなくてがん細胞になってしまうならこれはひとつの生命の限界点なのかもしれない。あるいはこれも一つの自然な終わり方なのかもしれない。そうなるとがんはもう病気でもなくなってしまう。一つの老いの形。一つの老衰の現われと言ってもいいのかも知れない。若いときはがんは免疫の力で発見される大きさになる前に消えてしまうこともあると言われている。ならばがんになること自体が生命力の衰えの現われなのだろう。それを取り除いて寿命を延ばすこともできる。しかし次々と転移してしまえばそれはもう体全体が抵抗力を失っているともいえる。
 初めは正常の細胞だけの状態。そのうちがん細胞の芽が現れて最初のうちは免疫抗体反応でその芽を摘み取るがやがて取り漏れが現れてがん細胞が体に住み着く事になる。体が歳を取るにつれ免疫力は衰え、がん細胞が勢力を増す事になる。この侵略は生命が滅びるのが自然なように不可抗力のような気がする。がんは人々に警告しているのか。これ以上長生きする事は自然に反することだと。長寿化し過ぎた社会への警告じゃないのか。人間は医療の高度化で長生きし過ぎるようになってしまったのか。生き過ぎは及ばざるがごとしである。
 がんは増えたのではなくただ人々が長生きするようになっただけである。昔の人はがんになる前に死んでいっただけの話であると。