SF紹介

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レ・コスミコミケは異色だと思う。構成としてはQfwfqが語る12章の物語からなっている。各章はほとんど独立した短編として読むことができる。一応時系列になっている(時間的前後関係が不明なものもある)が、当の作品の中で章の時間的前後関係はとりたてて重要ではないと思う。
「月の距離」(第1章)に出てくる「つんぼの従弟」は、気ままに自分のロマンを追いかける。彼は『不在の騎士』に登場するグルドゥルーに似ている。VhdVhd夫人はこの「つんぼの従弟」に憧れ、QfwfqはVhdVhd夫人に恋焦がれる。
このような三角関係(一人の女性を巡って二人の男が争う)、
トリックスター的自己(両生類としてのQfwfq、あるいは恐竜としてのQfwfq)、
二項対立(「宇宙にしるしを」のQfwfq vs Kgwgkなど)
が基本的な軸となって物語りは展開される。
各章の独立性が強い。面白い章もあれば、退屈なのもあった。一人の人間の現実も、百億光年離れた銀河も、宇宙ができるより前も、恐竜の心情も、水素の誕生も、自由に行き来してQfwfqは語る。(彼が何者かは謎である。)
宇宙の特殊な現象、人間の日常生活とかけ離れた世界の出来事が、あたかも私達の日常生活の出来事を語る調子で展開していく。魚の叔父と新生類のフィアンセの間で板ばさみとなった両生類Qfwfq。宇宙の原型段階で、あらゆるものが未分化の状態にあっても、真の愛情の発露であるPh(i)Nko夫人の発言はただ、「ねえ、みなさん。おいしいスパゲッティをみなさんにご馳走してあげたいわ!」という素朴なものだった。
カルビーノは、いがみ合い、失恋、深い愛情など、素朴な日常の出来事を、壮大な宇宙の現象に絡み合わせて、面白い描写をする。その力量ゆえに、Qfwfqが壮大な宇宙見渡し図を、人の素朴な言葉でさらりと言いのけてしまった異色の作品が出来上がったのだろう。

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原作は1968年に発表されたものである。そして物語は発表された年から始まっている。

 物語の舞台はエリザベス1世が暗殺され、結果として産業革命が起きずに中世のまま進んで来た世界である。

 そのため、蒸気機関は発明されているが、電気は知られておらず、
また、カトリック教会がヨーロッパ世界を支配し、人々は中世的世界の中で生きている。

 それぞれの章の主人公たちは、この世界の中で生きていくことによって、我々読者に物語世界の空気を伝えている。
その描写は非常に生き生きとしており我々読者にこの世界で生きている人間の一人になったように思わせることに成功している。

 そして主人公たちの行動によって、この物語世界は少しずつ変わっていき、結末を迎えるのである。

 なぜカトリック教会がこの世界を支配しているのか、そしてその後の世界はどうなったのか。最後まで飽きさせない小説である。
 またサンリオ文庫版では省略されたある人々が使う記号が載っており、サンリオ文庫版よりもわかりやすくなっている。
 非常に完成度の高い小説であるので是非読んで欲しい。

デイヴィット王の宇宙船という話 - hasenkaの漂流記

この本はどう見ても王立宇宙軍オネアミスの翼の原作なのではないかと思ってしまうがウィキペディアには言及無し。
王立宇宙軍〜オネアミスの翼
でこの話は宇宙船を自力で打ち上げれば銀河連盟から文明人として認められ植民地化されることはないというのが筋なのだ。ある星が侵略の憂き目に合い圧倒的戦力差の中で最早征服されるのは時間の問題という切迫した状況の中、この宇宙船ルールを適用されるべき奮闘する。有人飛行を成功させれば独立国として認められる。まだまだロケット技術を持たない技術者がどうやって宇宙に飛び出すか。

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まず言っておきたいのは、本書の主人公である象牙象牙に主人公っていうのも変なんだけど)が実在のものだという事である。
 文庫本にはその写真がのっているのだが、象牙を持っている現地人(多分アフリカ人の背の倍以上あるのだ。化物みたいな象である。マンモスなんじゃないの?

 その象牙がたどる六千年以上の歴史を見事に描き出し、ロマンあふれる物語にしたのが本書である。
 各章それぞれが、独立したエピソードで成り立っているのが興をつないでおもしろい。
その各章の冒頭に少しだけ挿入されているキリマンジャロ・エレファント(象牙の主)のモノローグもラストに向けて集約され、月並みながら効果をあげている。

 良質のミステリーに似た謎解きあり、壮大な宇宙ロマンあり、自然に対する人類への痛いメッセージあり、マサイ族の誇りに満ちた悲しい歴史ありと、何かと心に る本だった。酔ってしまいました。
 こういう本を読むと一つだけ困ったことがあります。
 それは、次に読む本が選びにくくなってしまうということです。