「大人の見識」

つまらん本だな、と言い切ってしまってもいいのだが一つだけ。遠洋演習で世界を巡っていて同行したカメラが趣味のコンタックス何とかさんが英海軍の演習を目撃して夜間に的確に戦闘機を捉える投光器を見て新しい感知システムを予感したのに誰も取り合わなかった事。レーダーの存在が世界に知れ渡る四年前でもう海軍も新技術に消極的だったのだから救われない。まぁこれも技術で負けた結果論でだから日本が戦後技術一辺倒に走る結果になったのだからそういうものか。やはり当時の空気は技術は補佐的なもので作戦優先だったんだろう。何を言っても結果論。航空機の時代も結果論。当時は誰も未来はどうなるか、今の時代が10年後どうなるか分からないように当時も分からなかったのだろう。あくまでも実戦を通して結果が出なければ証明されなかった。
 だいたい航空機の転換が遅れたのは海軍そのものの存在だろう。艦船が単なる戦闘機の輸送船になってしまう空母の転換を認めず戦艦による戦いで主役の座を明け渡したくなかったのだ。誰でも自分達の存在を自己否定するのは困難だし軍隊なんて尚更組織変更の融通が利かない事は目に見えている。海軍はどちらかというと良心的に見られるけど海軍の優柔不断な態度が戦争を泥沼化させたのだ、と言ってみた。
 でこの本は何か結果が出た後の見地からものを言ってるようにしか見えなくて奇麗ごとを並べているようにしかみえない。もっと今の人の常識を覆すような爆弾発言をしてもらいたかった。本当はもっと隠し持っているのだろうがそれを墓場まで持って行くのが大人の見識ですかそうですか。
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