2065年地球から死が消えた

別に誰もが死ななくなったという話ではない。死生観が大きく変わってしまったというそれだけのつまらない話である。一つ言える事は自殺者がいなくなったという事だ。つまり自殺する必要がなくなったのである。みんな誰も死のうなんて考えないし、しないけど死は死でなくなってしまったのだ、今までの概念からすると。しかし生物学的には死は死で敢然たる事実である。死は悲しむべき事柄ではなく目指すべき目標となったのだ。そんな考えは一部にはあっただろうがそれが2065年に人類の共有する概念となってしまったのが新しい事態なのだった。死は祝福され祝うものとされ全国から祝電が届く。しかしだからといって死を急ぐ人はいない。そんな事をしても意味が無い事を知っているから。死は最後に上り詰める階段なのだ。様々な発展段階の中の最終段階。