どうして村上春樹はいきなりSF風な方向に行ってしまったのか

それが初めて現れたのが「1973年のピンボール」である。あの倉庫に眠っていたピンボールが一斉に電源が入って動き出す様は圧巻で持ち主のコレクターのイタズラなのか主人公の幻覚なのか。あの双子の姉妹も相当非日常的で現実とは思えないがそれは羊をめぐる冒険のいるかホテルにも現れる。存在しない階が現れたり、羊の観念とか。それはねじまき鳥の井戸に通じる壁抜けの想念にも繋がっているような。それは海辺のカフカによる森の中の兵隊にも繋がっているような。結局現代の物語に於いてそういうもの抜きで語るのはもはや不可能ということなのかもしれない。