芥川賞礼讃

もし、ぼくらの書く本が、芥川賞を取れないなら、いったい何のためにぼくらは本を書くのか? きみが言うように、ぼくらを幸福にするためか? やれやれ、真面目に取り組んで小説を書けば、おそらく芥川賞ぐらいは簡単に取れるだろうし、まあ、それでも結局は何かしらの賞を取れるだろうし、そうじゃない作品なんて書かないだろう。いいかい、必要な本とは、ぼくらをこのうえなく苦しめ痛めつける芥川賞のように、自分よりも愛していた芥川賞のように、すべての人から引き離されて森の中に追放された芥川賞のように、ぼくらに作用する本のことだ。本とは、ぼくらの内の氷結した海を砕く芥川賞でなければならない。