『増補シミュレーショニズム』

この本自体がシミュレーショニズムを体現しているようでサンプリングでリミックスでカットアップされているようなノリでまともに読んでいるとクラクラしてくる。かなり論理の飛躍もある。しかしこれは読者体験じゃなくて音楽体験のようなものなのかもしれない。サンプリングでリミックスでカットアップな内容は論理で捉えるのでなく感覚で捉えるのだ。
 でまともに読めるのは増補で追加された講義部分でここで現代の音楽状況が一望できるように整理されている。これが無かったオリジナルはちょっとした悪夢ではなかろうか。とてもついて行けなかったかもしれない。しかしそういう事があったと知識的に分かってもその後どうなって今に至っているのかさっぱり分からない。もう音楽自体あんまり聞かないし。
椹木野衣「シミュレーショニズム」