あの時から

UFOが地球にやって来た。今度こそは未確認じゃない、バッチリテレビで生中継されたのだから。だからもうUFOとは呼べない。宇宙船で宇宙人がやってきた。しばらくお偉い方と挨拶していたが彼らは一枚の書類を残して何処かへと去ってしまった。その書類は親切にも地球の言葉で書いてあるらしい。噂ではラテン語らしいと漏れてくるがその選択に宇宙人のセンスを感じた。でそこに何て書いてあったかというと、地球の住所が記されているらしい。つまり意訳すると銀河連邦27856区太陽系地球という意味らしい。それだけ残して彼らは去っていったのである。
 で、あれから20年何もかも変わったがある意味何にも変わらないとも言える。変わったのは地球の人間側の気持ち。もう人間は宇宙で孤独な存在でないという事実。変わらないのはあれっきり宇宙人はやって来ず物理的には地球は宇宙の中で孤立しているという事実。それを見誤らせるのはあの住所のみ。あの一枚の紙っきれの為に膨大な予算を立てて神殿のような黄金のピラミッドが建設され中には厳重に保管されたあの紙っきれが鎮座致しているわけである。
 しかしあれから宇宙人はやってこないしその事を知らない人間も大人になってきて当然陰謀説が囁かれるようになった。あれはアメリカが自作自演した陰謀であるというのが最も知られていた。アメリカが影響力の低下にあって起死回生の秘策であったというのがもっぱらの見方である。一方ロシア説も毎度ながら根強い人気を博していた。エクアドル説というマニアックなものももちろんある。
 しかし人類に与えた影響は大きく文化という面でこれほど人類文明に影響を与えた出来事はなかったかもしれない。