黒猫が目の前を横切ると不吉な予感

ただの黒というだけでそう思われてしまうのは黒猫がかわいそう。けれど平安時代の怪異ちょっとでも変な事が起こると貴族はこれは凶事の予告ではないかと恐れいちいち陰陽師に占ってもらったのだから商売繁盛したわけだ。その怪異とは、家中での蛇の出現や鳩の迷い込み、格式高き場所での犬の尿や糞、鹿や狐等の野生動物の出現、虫の異常発生や大きい虫の出現、はたまた木の倒壊や突然の枯れ木、建物の自然倒壊と日常茶飯事に及んでいる。
 まったく現代人から見ると馬鹿らしく感じるが当時はもちろん科学なんてものはなく依って立つ場所がそうだったんだから仕方が無いのだろう。で、現代人はそれほどバカにできるのかというと結構怪しくなる。私達が科学的というものを信じているのは何も一人一人が科学的態度を身に付けているわけでなく結構盲目的信頼に任せきっているところがあるはずだ。第一そんな事していては非効率で社会は全然前に進まない。面倒な事は省略されるのが常である。だから当時だって陰陽師が科学者の役割を果たしていたわけである。なんと言ったって陰陽師の中には天文博士の肩書きの人もいたわけだから。自分だけが信じなくても周りの人が大勢信じていればそれに従うしかないわけでそれに下手に抗えば社会的身分も危なくなる。で現代も科学なんて信じないと言っても周りの人間が多く信じていれば基地外扱いされるわけでその構造は何ら平安時代と変わらないと言ったら石が飛んでくる。
 いやぁ私だって十分科学に染まってますよ。もう科学抜きの思考法なんて不可能になってると言っても過言ではない。それが現代人の不幸である。なんて言われてもあまりピンと来ないし。しかし占いというのは危険だな。誰だって不吉な予告なんて受けたくないし金で済ませられるならそうしたいしそんな不埒な奴らがいただろうし、結局は平安時代はそういう賄賂やら人身無心の乱れた世になって滅びてしまったのだから。結局武力に頼る武家政治が台頭したのもそんなよるべない人心の頼りなさから来たものだろう。